働き方改革の話題でよく出てくる、「労働生産性」。
この言葉の意味を、きちんと説明できますか?
また、労働生産性を数値として算出する方法をご存じでしょうか。
日本人は労働生産性が低いといわれる昨今ですが、やり方次第で解決できるはずです。
こちらでは用語の説明から計算方法、労働生産性の向上を図るアイデアまで、幅広くお伝えします。
労働生産性とは、「労働力に対して、どれだけの成果が得られたのか」という指標です。
一口に労働生産性と言っても、次のようにさまざまな解釈があります。
これらに共通して言えるのは、「従業員一人当たり、または1時間当たりの成果が上がれば、企業の利益も上がる」ということです。
その結果、企業は新たな事業展開に臨むことができ、従業員は賃金アップにつながります。
また、成果にあたる生産量や生産額の部分も、定義によって異なります。
単純に販売数や販売金額とする「物的労働生産性」なのか、それとも企業の新たな付加価値を対象とする「付加価値労働生産性」なのかが重要です。
残念なことに、日本の労働生産性は米国の3分の2程度、主要先進7カ国の中でも最下位とされています。
公益財団法人日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較2017年版」によると、日本の時間当たりの労働生産性は4,694円(46.0$)なのです。
出典:労働生産性の国際比較 労働生産性の国際比較 2017年版(p.7)│公益財団法人 日本生産性本部
さらに日本では、2016年から2065年までに労働力人口が4割減少するといわれています。
以下は国勢調査による、日本の総人口推移データです。
・2015年 1億2,709万人
・2040年 1億1,092 万人
・2053年 9,924 万人
・2065年 8,808 万人
出典:日本の将来推計人口(平成 29 年推計)│国立社会保障・人口問題研究所
一人当たりの労働生産性が変わらない場合、2065年には日本全体のGDPも4割減少します。
GDPが減少すれば企業収益だけではなく、国の税収も下がるでしょう。
国の税収が下がれば政府は今より社会保障を切り詰め、結果として貧富の差が拡大します。
この負の連鎖を食い止めるためにも、近年では働き方改革が注目を浴びているのです。
これからは国に任せきりではなく、企業が主体的に労働生産性を見直さなければいけない時代です。
労働生産性の計算方法を利用しつつ、働き方改革を社内に取り入れましょう。
さて、労働生産性には「物的生産性」と「付加価値生産性」があるとお伝えしました。
どちらの労働生産性であっても、計算式は次のとおりです。
【労働者一人当たり】
生産量÷労働者数
【労働者1時間当たり】
生産量÷(労働者数×労働時間)
この計算式の「生産量」に何を当てはめるかにより、労働生産性の数字の意味が変わってきます。
物的生産性では「生産量」に、生産した個数や大きさ、重さの数値を入れます。
これにより、純粋な生産現場の効率を見ることが可能です。
期間ごとに比較すれば、生産効率の推移を追うときの指標にもなります。
また「生産量」の部分には、生産額を当てはめてもよいです。
付加価値生産性の場合、「生産量」に付加価値額を入れることが多いとされています。
次の計算式により、付加価値額を求められます。
・付加価値額=売上高-外部購入費(原材料費や外注加工費、機械の修繕費など)
売上のためにどれほどの手間がかかったのかによって、付加価値額が変動するのがポイントです。
さらに付加価値額ならば、企業運営費、経常利益、減価償却費などを考慮したうえで評価できます。
現状の労働生産性が分かったとしても、すぐに改善するのはなかなか難しいところ。
そこで、これからお伝えする労働生産性の向上アイデアを、まず取り入れてみてはいかがでしょうか。
労働生産性を向上させるためには、アイデアを実践するだけではなく、継続することも大切です。
無駄な業務を1つでもカットすれば、比較的早い段階で労働生産性を向上させられます。
たとえば会議の時間をカットしたい場合、タイマーをセットするか、立ちながら話すといったアイデアがおすすめです。
ICTとは、「情報通信技術(Information and Communication Technology)」のこと。
インターネットを通じて人とのコミュニケーションを図るため、移動する時間を大幅に減らせます。
ビジネスコミュニケーションに特化したチャットツールや、ビデオ通話によるオンライン会議などを活用してみることをおすすめします。
一人ひとりの生産性を見直すよりも、会社全体で働き方に対する意識を変えたほうがよい場合もあります。
労働生産性をテーマにした研修を取り入れることで、社内の問題点が浮き彫りになるかもしれません。
時には役職や上下関係という垣根を取り払ったうえで、自由にディスカッションできる場を設けることも必要です。
もし経営者が生産性向上のために現場の人員を減らそうとしたときに、現場社員から「すでに残業ありきで働いているのに、人員削減はおかしい」という声が挙がったとします。
このときに何も解決策を見出せずにいると、最終的には現場の愚痴で終わってしまうことでしょう。
さらに「うちの会社は現場が忙しいから、体力のある人が来てほしい」という悲惨な結果を招く恐れもあります。
お互いの立場をよく理解し合い、会社は一つのチームであると認識する必要があります。
そのためには、いまの現状を包み隠さずに伝えることが求められます。
自社の労働生産性を振り返ってみると、改善策が意外と出てくるものです。
日本人は、長時間労働に慣れてしまっている傾向にあります。
しかしこれからの時代を生き抜くためには、時間ではなく効率で問題解決を図らなければなりません。
労働生産性を上げるための方法を、ぜひ一度社内で話し合ってみてはいかがでしょうか?