コロナウイルスによって社会が大きく変化し、企業の働き方や存在価値も変わってきました。そんななかで、オフィスの役割も変化を遂げつつあります。いったいどのような変化が生まれてきているのでしょうか。
リモートワークの拡大やリモートワークとの併用が、コロナ禍で広がりを見せるなか、オフィスの役割が改めて見直されています。完全にリモートワークのみで対応できている企業は少なく、リモートワークのみで対応できない問題としては、一番大きなものに社員間のコミュニケーションがあります。
Web会議と対面会議のどちらが良いかというアンケートなどをみても、どちらかに偏ることなく評価が拮抗しているという結果が多くみられます。 この結果から言えることは、少なくともリモートワークとオフィスワーク、どちらかが優れているということは現状ではないということです。
そのため、これからの企業の働き方は、リモートワークとオフィスワークの併用を前提として考えていく必要があります。リモートワークとオフィスワークを併用するならば、今まで必要であった程のデスク数やオフィス面積は間違いなく必要ありません。
その代わり、リモートでのWEB会議などに対応したスペースが、これまで以上に必要になってくることが予想されます。
また、経営者の視点になって、アフターコロナのオフィスの役割・価値を考えると、リモートワークの普及やソーシャルディスタンスへの考えだけではなく、他の要素も中長期的な視点をもって考える必要があります。
それは業務のアウトソーシングや、AI・ロボットの普及です。
ここ最近、業務のアウトソーシングを行う市場が継続的に拡大しています。
今までアウトソーシングというと、自社ではカバーできない専門領域のみアウトソーシングするといった考えが主流でしたが、最近では非常に簡単な業務までアウトソーシングできる環境になってきています。
例えばですが、電話を受け取って単純にテキスト化し社内チャットに投稿するようなアウトソーシングが、なんと月額1万円から利用できたります。
またAIの発展により、今まで社員が行っていた業務が、人ではなくAIによって可能になって来ています。
顕著な例としては、銀行業界ではAIを活用したRPAにより、近年で社員の1/3の業務が圧縮できるという見通しがあり、大規模なリストラ・退職奨励が進んでいます。
つまり企業・経営者の立場からすると、単純な業務を回すために大量の社員を雇用する必要ではなくなってきた、または必要性が下がってきたということが言えるのです。
逆にこれを従業員の立場から考えると、アウトソーシングやAIで代替できる仕事というのは、やりがいの少ないストレスフルな仕事であるともいえます。やりがいの少ない仕事を続け、ストレスを抱えるデメリットに対して、支払われる給与のバランスがとれなくなってきているという現状も併せて考える必要があるでしょう。
こういった動きの中で経営者は、オフィスの役割・あり方と同時に、改めて企業の価値は何か?と考え、それに合わせてオフィスの役割を決める必要があります。
やりがいの少ないストレスフルな仕事から従業員を解放するには、リストラや退職奨励だけではなく、企業価値を高める仕事にジョブチェンジさせる方法があります。
上記の流れを含めて考えると、これからの企業の価値はイノベーションや企画といったものに、より集約をされて行くと考えられます。オフィスもリモートワークやAI・ICT、アウトソーシングの活用を前提とした、イノベーションを生む役割が重要となってきます。
イノベーションというと、社会を大きく変化させるものを考えなくてはならないと、二の足をふんでしまう方もいらっしゃるかもしれません。もちろんiPhoneや宅配便など、社会を大きく変えたイノベーションも大切ですが、例えばメーカーがシャンプーのボトルをおしゃれにするとか、虫除け剤にカバーをつける程度のイノベーションでも十分に価値はあります。
現代は、イノベーションも少量多品種の時代です。身近なちょっとした社会課題に気づき、消費者の共感を得ることがこれからのビジネスには必要です。
そして、大きな答えやゴールが明確ではない時代、小さなイノベーションを数多く生みだすためには、雑談や、ちょっとした相談、 身振り・手振りといったノンバーバルコミュニケーションと呼ばれる言語以外のコミュニケーションが重要になっています。
リモートワークが中心となったため、ちょっとした相談がしにくい、テキストではなかなか伝わらないニュアンスといった障壁が発生しており、これらを越えていくようなオフィスを考えていく必要があるといえるでしょう。
コロナによって、社会は大きく変化しています。この変化をピンチではなくチャンスにできるオフィスはどのようなものなのか、これからもずっと考え続けることが重要です。