コロナ禍において急速に広がったリモートワークですが、コロナ禍も1年以上が過ぎてメリット・デメリットともに見えてくるようになりました。今後はオフィスワークとリモートワークを併用したハイブリッドな働き方が、世界的に模索されていくことになるはずです。
そのような時代に、企業はどのような対応をすべきなのでしょうか。
新型コロナウイルスのまん延により、首都圏を中心にリモートワークの活用が広がりました。
広がりとしては東京都や東京近郊の都市圏を中心に、大阪・名古屋近郊とリモートワークを実施する企業が増え、その後は、全国の地方都市にも広がりを見せました。
業種・業態では、小売や医療・福祉関連はなかなか業務内容的にリモートワークの活用が進みませんでした。しかし情報通信業や学術研究・専門・技術サービス業では、多くの業種業態でリモートワークが活用されています。
Zホールディングス傘下のヤフーが、都内の拠点の約4割を縮小する方向であることが発表されました。ヤフーは全国の拠点でリモートワークの割合を9割にまで拡大し、オンラインが社員共通の仕事空間であり、物理的な場所はそれぞれがパフォーマンスの出る場所で行うという働き方を進めています。
また、一見リモートワークが難しそうな製造業においても、オフィスワーカー中心にリモートワークが増え、製造業全体としては高い割合となっています。
では、コロナ禍が収まったあとも、リモートワークは拡大するのでしょうか?
おそらく、ここから更に急激にリモートワークが拡大する可能性は低く、コロナ以前の状態とコロナ禍の状態の中間程度で落ち着くと考えられます。
都心での高い賃料を嫌い、オフィスを閉鎖した企業もあれば、都心のオフィスにこれまで進出できなかった企業が、空室や賃料が下がったことをきっかけに、都心に進出するといった事例がみられます。
都心の瀟洒なオフィスによって従業員満足度を高め、対外的な企業信頼度の向上を図りたいニーズは依然存在するほか、オフィスでなければできない仕事があると考える企業も多く、今後はオフィスワークとリモートワークのハイブリッドが常態となっていくでしょう。
ワクチン接種が早かったアメリカでは、ドラスティックにリモートワークに舵を切っていたビックテック企業でもフルリモートは廃止となり、週に数日はオフィス出勤とするルールが広がっていきました。
オフィス復帰を急ぐ必要がない職種であっても、オフィスで同僚や顧客とコミュニケーションをとり、イノベーションを起こすことを求めるニーズは高く、直近では変異株の拡散で、また状況は変化を見せつつあるもの、アメリカにおいてもオフィス回帰を望む流れは止まることはないと思われます。
このように揺り戻しが見えるリモートワークですが、完全に以前の状態になることはありません。
リモートワークのメリット・デメリットや、どういう業務が向いているかなども理解されてきたこともあり、今後は国内でもうまく併用・活用し、生産性が最も高い方法を模索していくと考えられます。
そして、そのあり方は企業の業種や経営思想・戦略などによって異なるはずであり、より多様な形がこれから生まれていくでしょう。
今後はリモートワークの併用を前提とした、労務関連のルールや制度設計、働く環境設計が重要となります。
働く環境としては、出社時のオフィス環境をリモートワーク併用に適した形へと変更する事、また在宅勤務の生産性向上へのサポートも重要です。
具体的には、まず在宅勤務時のインターネット環境の整備は必要最低限といえるでしょう。
そして、ハイブリッドな働き方に対応するためには、会議は基本オンラインになるはずです。
そのため、自宅のインターネット環境を安定させるためのWi-Fi ルーターの貸し出しや、マイクやカメラ・照明なども重要なポイントとなります。
その上で、クラウドシステムの導入など、オンライン上で業務が完結できる環境設定が必要になるでしょう。
労務関連のルールや制度設計においては、ジョブ型雇用が広がっています。
従来のメンバーシップ型雇用では、個人の業務内容は固定されておらずチームに与えられた仕事を全員で助け合ってこなしていきます。そのため上司は、常に部下全員の業務の状況を把握し、業務の分配や育成に取り組む必要がありました。
しかしリモートワークでは、そのような細かな対応は不可能です。そこで、業務が固定化され、出して欲しい成果が明確なジョブ型雇用が注目されているのです。
今後は、完全なオフィス回帰もリモートへの全振りもありえず、割合こそ違えどハイブリッド型の働き方がスタンダードになります。
いち早く、新しい働き方に対応した制度設計や働く環境設計が求められるでしょう。