近年、人手不足もあって、従業員の健康促進が企業の経営課題としてクローズアップされています。経済産業省からもオフィスでの健康を促進する7つの行動が推奨されています。従業員の自主性に任せるだけでなく、オフィス環境を改善することで健康促進を実施している企業も増えています。
従業員のパフォーマンスの向上を目的に、オフィスで実践できる従業員の健康促進が注目されています。これは「健康経営」という言葉で経済産業省からも文書が出されており、少子高齢化が進み人手不足が深刻化する中で、国としても大きく推進している政策となっています。
参考:経済産業省 健康経営オフィスレポート
「健康経営」とは、企業が経営的視点から従業員の健康維持・増進の取り組みを行うことをいいます。戦略的に「健康経営」に取り組むことで、将来的に企業の収益性を高める投資とする考え方です。
「健康経営」に関する経済産業省の文書では、下記の7つの行動が推奨されています。
・体を動かす
・快適性を感じる
・コミュニケーションする
・適切な食行動をする
・健康意識を高める
・休憩・気分転換する
・清潔にする
これらの7つの行動が、健康問題による従業員の欠勤と生産性の低下という2つの経営課題の解消につながるというのです。
そして、これまでこれらの行動は、従業員の意思や努力に任せる企業が多かったのが現実です。
しかし、自己責任による健康管理は、えてして体調を崩していても無理をして出社するといった根性論に変わってしまい、逆に従業員の生産性を低下させてしまっていました。
そのため、今後は従業員が知らず知らずに7つの行動をとってしまうように、オフィスなどの職場環境を企業側が工夫することで成果を出すことが求められています。
現代はパソコンに向かった仕事が大半となり、体を動かす機会が減っています
また、リモートワークも普及してきたことで、ミーティングやお客様との打ち合わせも自分の席で行う事が増え、ますます体を動かす機会が減ってきました。
そこでオフィスレイアウトやオフィス家具にも、体を動かす目的の物が必要となって来ています。
「体を動かす」の促進は、従業員の関心も高く、肥満の改善や生活習慣病の予防など、成果が目に見えやすく、満足度も高い項目です。
現代社会では、これまでのような単純作業・ルーティン作業から、市場に対して新しい価値を創造する仕事が求められています。仕事の生産性も、チームワークや表現・プロジェクトタスクなどによって向上を図る必要性があります。そんな現代では、社内での「コミュニケーション」がさらに重要になってきているといえるでしょう。
「コミュニケーション」の改善には、オフィスのフリーアドレス化や、ふらっと足を運ぶライトな打ち合わせスペースなどの設置が効果的です。
パソコンと向き合った状態での業務が増えてきている現代、クリエイティビティを発揮していくには、「体を動かす」と同じく「気分転換」も重要なポイントです。
人間の集中力の限界を示す「15・45・90分の法則」というものがあります。人が高い集中力を維持できるのが15分程度。普通の集中力を保てる時間が45分。大人が集中していられる時間の限界が90分だと言われています。
先進的なオフィスでは、気分転換用にダーツや卓球・ビリヤードを設置するなど、気分転換への注目度が上がっています。
自動車用特殊精密部品メーカーの株式会社月星製作所(石川県加賀市)では、従業員の健康を考えて、フリーアドレスを導入するタイミングで上下昇降デスクを導入しました。
CADを使用した仕事が中心のため、どうしても座りっぱなしになりがちでしたが、オフィス内のいたるところに上下昇降デスクを設置することで、最初は慣れなかった従業員もデスクを高くして立って働くスタイルになりました。
それ以外にも、書庫だったスペースをおしゃれなカフェスペースに変更したり、畳コーナーを設けるなど「コミュニケーション」や「休憩・気分転換」にも気を配ったオフィスにしています。
同じく上下昇降デスクを導入した企業に、テレビ東京系列のカンブリア宮殿で紹介されたこともある社会福祉法人佛子園(石川県金沢市)があります。
佛子園はスタッフが健康的で、かつ誇りを持って働けるオフィスを模索していましたが、オフィスリニューアルにあわせて上下昇降式のデスクを導入しました。立ち姿勢での仕事により、健康的なだけでなく、かっこよくスマートな働き方ができるオフィスに変貌を遂げています。
従業員の健康促進には様々な取り組みがありますが、コミュニケーションのためのフリーアドレスの導入や、「立ち仕事」のための上下昇降デスクの導入から始める企業が多いようです。導入が難しい職種もやりようによっては成功するケースも多いので、専門家の指導も受けながら、健康促進できるより良いオフィスを作っていきましょう。