終身雇用制の終わりと引き換えに、社員の帰属意識低下が問題視されるケースが出てきています。「社員の帰属意識」とは何なのでしょう。また、会社に対する帰属意識の低さは、どのような問題を引き起こすのでしょうか。
ここでは、会社への帰属意識とは何かという定義や、社員の帰属意識の低さによって起こる問題点と、帰属意識を高めるための具体的な施策について解説していきます。
会社への帰属意識とは、そもそもどのようなものなのでしょうか。
「集団を構成する一員である」という意識
「帰属意識」とは、あるグループの中で「自分はそこに属している」「メンバーの一員である」と感じている意識のことをさします。「そのグループを構成している1つに、自分が確かに含まれている」と感じる意識ともいえます。
会社や組織も、1つの社会的なグループです。会社で働いたり、営業活動を行ったりしているとき、社員は一定の帰属意識を持って動いています。
全ての人が何かに帰属意識を持っている
スポーツや音楽といった趣味の世界から、国籍や性別、年代など、全ての人は何かに帰属しているといえるでしょう。
自分が属していると感じるものに対しては、愛着が生まれます。自分が属しているものを広めたり、良さをわかってもらいたいと考えます。
帰属しているものの良さが広まることは、自分の良さが広まることと似た作用を生み出します。帰属意識が高い人ほど、その集団について啓蒙する努力を惜しまなくなるでしょう。
会社に対する帰属意識とは
会社に対する帰属意識は、主に企業理念や経営方針に対する共感から生まれます。それ以外にも、扱っている商品への愛情や「営業」「接客」「会計」といった職務に対する帰属感もあるでしょう。
仕事の内容によって、何に帰属意識を強く持つかは変わります。どのような業務であっても「この会社を支えている」「皆で協力して運営している」という感覚があれば、会社に対して帰属意識がある状態だといえます。
「会社で社員として働いているなら、当然帰属意識はあるだろう」と考えがちです。しかし、社員が帰属意識を持っていても、それが低いか、もしくはほとんどない状態であるとき、さまざまな問題が起こる可能性があるのです。
社員の帰属意識が低い状態が続くと、どのような問題が起こるのでしょうか。
社員のモチベーションが下がる
帰属意識が低い状態とは「自分は会社にとって重要な社員ではない」と感じることです。帰属意識が低い社員は「生活のために働いているだけ」「会社や商品、サービスに愛着はない」と考えています。トラブルが起こっても、繁忙期で忙しくなっても、業績が悪くなっても、「自分には関係ない」と思うのです。
このような状態で仕事に従事していれば、必然的に仕事に対するモチベーションは下がり、業務効率も低下します。そればかりか、会社への帰属意識が高い人に対して反発心を抱くケースも少なくないでしょう。
定着率が悪くなる
会社に対して帰属意識が希薄であれば、辞めることへの抵抗も少なくなります。適当に仕事ができる環境が許されなくなるとき、帰属意識が低い社員は簡単に退職を選択するでしょう。
会社がより良い状態へと変化することにも無関心であるため、社内の業務体制の改善・改革にも否定的になりがちです。
定着率の悪い会社は、引継ぎや教育といった手間が常にあるため、長く勤める社員の負担が大きくなります。帰属意識が高い優秀な社員を疲弊させてしまうリスクもあるのです。
社員の帰属意識を高めるためには、以下のような施策があります。
社員目線によるオフィス環境の改善
オフィス内が劣悪だと、そこにいる社員は「自分は会社から大切に思われていない」と無意識に感じているかもしれません。社員が1日の長い時間を過ごすオフィスは、社員が仕事をしやすい環境に整えたいものです。
予算をかければ良い、という単純なものではなく、デスクの配置や動線、ちょっと休憩できるスペースの設置など、小さなことでも構いません。「あなたの帰属意識は低いかもしれないが、会社は社員に帰属していますよ」というメッセージを送る手段として、オフィス環境の整備は非常に有効です。
トップとの活発なコミュニケーション
会社を立ち上げ、営業を継続するという行為には、強い意志や希望、使命が必要です。多くの経営者は、そういった使命感を持って会社を経営していることでしょう。「従業員を守る」という意識も強いはずです。そういった熱い気持ちや将来のビジョンについて、社員と共有できる場を多く持つことも重要です。
トップからの一方的な発信は効果的とはいえません。「社員の一意見も尊重する」と感じられる、カジュアルで親密なコミュニケーションができるとベストです。
トップと社員とが親密なコミュニケーションを取れる環境づくりの第一歩として、オフィス環境の改善が役立ちます。「社員に快適に仕事をしてもらいたい」「上下関係を気にせず、気軽に話しかけてほしい」という思いの伝わるレイアウトというものがあります。現在のオフィス環境について不明な点があれば、プロに相談してみるのも1つの方法です。