残業の上限設定や有給取得、フレックス制など、社員にとってはメリットが多いはずの働き方改革ですが、デメリットにばかり目を向けがちな社員がいるのも事実です。働き方改革を推進するため、社員の意識を変えるためにはどうすればいいのでしょうか。
今回は、社員の意識改革がうまくいかない理由や、意識改革を成功させるポイントについてご紹介します。
働き方改革に非協力的な社員は、メリットよりもデメリットに対して抵抗感があると推測できます。働き方改革におけるデメリットと思われる点には、以下のようなものがあります。
企業ごとの体質に限らず、一部の業種においては連日の残業が常態化しているケースがあります。残業しなければ業務をこなせないのに、労働時間に上限を設定されたら仕事に支障が出るのではないか、それによって起きるトラブルやミスが自分のせいになるのでは、といった点について不安を感じている可能性があります。
社員の中には、残業代や休日出勤手当など、各種手当込みの収入が必要な場合もあるでしょう。働き方改革によって従来よりも長時間働けず、収入が減少することに対しての反発も予想されます。
育児や介護といった理由により、定時での出社や退社時間を変動させるフレックス制では、引継ぎや業務連絡といった手間が発生するのでは、と考える社員もいます。「皆が同じ環境、同じ条件で」という同調圧力があり、フレックス制で勤務するべき社員が遠慮してしまうケースも考えられます。
専門性のある高度な職務に就き、一定以上の年収があるなど、「高度プロフェッショナル制度」の適用対象者は、さらなる過労へと改悪されるのでは、という不安を持つ場合があります。
働き方改革を実施すると、従来の勤務形態とは違う働き方を選択する社員が増えるため、それぞれの勤務状況を管理する役職にある管理職に負担がかかるケースもあります。やり残した仕事の後処理や、人事評価のマニュアル変更、滞った仕事のフォローアップなど、今以上にやるべきことが増えてしまうのではないかと感じる管理職も、働き改革に尻込みしてしまいがちです。
いずれの場合も「今まで問題なく勤務できていた体制を新しく変える」という点への不安、という点に集約されるでしょう。
働き方改革に対して非協力的な社員に対しては、意識改革の重要性を説明し、理解を得ることが大切です。意識改革へ繋げるための施策としては、以下のポイントに当てはまる社員へ、個別に対処していくことになります。
日本人的な考え方として、たとえ少々手間であったり、理不尽と感じる業務に関しても「今まではこのやり方だったから」という一言で納得しやすいという特徴が挙げられます。これは、逆にいえば「効率的でふさわしいものであっても、今までに例がなければやらない」という考え方にもなりやすいのです。「自分は理不尽であっても、我慢してきたのに」という思いが、反発する理由に含まれているケースもあるでしょう。
これまでの業務で苦労をかけたことへの感謝に加え、将来的に問題点が大きくなる可能性や、よりよい勤務環境を作るための改善であり、決して改悪ではないという点について、時間をかけて理解を得ることが大切です。
「今まで通りで問題ないのでは」といった意見を持つ社員は、自分が問題なかっただけで、他者は問題を抱えているかもしれない、という視点が不足しています。全員が環境改善に対する意識を持ち、あらゆる状況の人が適材適所で働ける仕組み作りの重要性について、知識を深める必要があるでしょう。
上記のような説明のほかに、社員1人1人と個別に面談を行い、各自が抱いている不安や問題点について聞き取りを実施します。どのような点が不安なのか、何が解消されれば協力できるのか、どういった点を改善してほしいのか、といった要望へ配慮することで、社員の意識改革を促せます。
上記のような考え方や理解について、社内だけでは意識改革が難しい場合、外部講師を招いてのセミナーや、講習会を開催するという方法もあります。特に高度成長期やバブル期を経験したような「モーレツ社員」的価値観を持つ社員には、少しずつ時間をかけて、新しい働き方への意識を高めてもらうことが重要です。
社員の意識改革が難航するのには、必ず何らかの理由があります。全体的に意識改革を促しつつ、セミナーや講習会で知識を刷新し、個別面談で各自の状況を聞き出す努力を重ねて、理解を得ていきましょう。
参考資料:
働き方改革 社員の意識をこう “改革”
https://www.nhk.or.jp/shutoken/miraima/articles/00615.html
働き方改革の本質と目的:重要なのは「意識のチェンジ」
https://globalleaderlab.com/work-style-reform-essence-purpose