働き方改革と関係が深いとされている健康経営。なぜ、働き方改革を推進するうえで健康経営の実践が欠かせないのでしょうか。働き方改革が健康経営と関連している理由と、具体的な健康経営の実践ポイントについてご紹介します。
働き方改革と企業の健康経営は、以下のような関係性があります。
働き方改革では、残業時間の上限を法律で定め、1年に5日の有給休暇取得を義務化し、フレックスタイム制を導入するといった働きやすい環境作りの実現を目指しています。
サービス残業や徹夜の残業、休日出勤の連続などは、過労による体調不良を引き起こす原因ともなりかねません。働き方改革は、業務に携わる上での健康リスクを未然に防ぎ、社員の心身を守るための改革でもあります。
サービス残業や休日出勤抜きでは回らない体制を是正しなければ、働き方改革を実施して、社員のワークライフバランスを守ることは難しくなります。働き方改革と健康経営は、改革を進めることによって社員の健康状態を改善し、改革実施後の改善状態を保つことで社員のワークライフバランスも改善される、という表裏一体の関係となっているのです。
昨今、健康経営が注目されているのは、労働者の健康を守る以外にも理由があります。健康経営の実践によって、企業側も以下のようなメリットが受けられるのです。
週に5回、8時間以上業務に従事した場合、たとえ残業がゼロだったとしても1日の3分の1にあたる時間を仕事に費やすことになります。この時間を健康的に過ごせるかどうかは、健康維持に深く関わってくるでしょう。
働き方改革を行ったとしても、回らない業務を抱えたままではストレスフルな職場となり、健康経営とはいえません。ただ残業を減らすのではなく、時間内に業務を終了させ、少しでも快適に過ごせるための改善に取り組むことで、緩慢であった業務の効率化が図れます。
スポーツ選手が試合前に心身を最高の状態へと仕上げるように、オフィスワークにふさわしい健康状態、精神状態へと整えることも社会人として大切です。企業が率先して健康経営を推進すれば、社員1人1人の健康意識にも変化が出てきます。
業務を行う上で最高の状態へ仕上げる、という意識があれば社内が活性化し、生産性の向上も期待できます。
健康経営の実践では、多少福利厚生面において、初期費用が必要となるでしょう。しかし、少しの経費で社員全体の健康維持が促進されれば、病欠や体調不良による効率低下なども予防できます。ストレスフルな環境を改善することで、結果的に人件費や経費が削減できる場合もあるのです。
「中小企業では大手のような余裕がない」と考えがちですが、知名度のある大手企業であっても、勤務状況が劣悪だとされている企業は散見されます。過労死と隣り合わせのような状況で勤務する社員が多ければ、離職率も高まるでしょう。そうなれば、SNSで「あそこの会社はブラックだ」という噂の流布も懸念されます。
健康経営ができている企業では「他社よりも良い環境で働いている」と社員が感じるため、SNSでは逆に「ここの会社は働きやすい」といった良い拡散がなされやすくなります。「健康経営の優良企業である」というPRは、取引先や人材確保にも繋がる大きなメリットを内包している、といえるでしょう。
「働き方改革」と「健康経営」は並行して実践されるのが望ましいですが、社内調整など時間を要するものもあります。ここでは、今すぐ取り入れられる健康経営のポイントについてご紹介します。
雇用される側からのアプローチを待っているだけでは、健康に対する企業意識を高めることはできません。「良い睡眠を取っているか」「最近食べた野菜は?」「休肝日を設けている人は」など、トップから率先して健康に関する話題を提供し、徐々に健康維持へと意識を向ける場を増やしていきたいものです。
足つぼマッサージやバランスボール、銘水ウォーターサーバーなど、健康維持に意識を向けやすいツールを社内へ導入するのもよいでしょう。リラックス効果のあるBGMを流したり、観葉植物を置くといったメンタル面への配慮もおすすめです。
長時間デスクワークを行う部署では、デスクの高さやPCの角度、椅子の座り心地なども重要です。作業中の疲れを軽減させる、インテリアへの模様替えや配置変えなどを考えてみるのもよいでしょう。
働きやすく、疲れにくい環境で充分な休息が取れ、最高のパフォーマンスで業務に従事する社員が増えれば、働き方改革も前向きに進めることができるでしょう。しっかりと休み、健康的な状態で長く勤務してもらうことは、企業と労働者の両方にとって喜ばしいことであるはずです。
参考資料:
「労働基準法等の一部を改正する法律案」について
働き方改革の重要な要素「健康経営」とは?
https://workstyle.ricoh.co.jp/archive/health-management.html