働き方改革が提唱され、日本も長時間労働や勤務体系を見直す動きが出ています。しかし、未だに長時間労働の改善策が見いだせない企業も多いでしょう。
なぜ日本の長時間労働は、改善の傾向が見えないのでしょうか。長時間労働が解消しにくい理由を把握し、改善に関する情報を集めることで、自社の労働環境改善に活かせる可能性があります。日本の長時間労働について、ここで考えてみましょう。
日本に長時間労働が根付いている理由を5つ挙げてみました。
1. 高度経済成長期の名残り
高度経済成長の時代には、働けば働いただけの結果が出ていました。この、「より結果を出すためには、より長く働く」という考え方が原因で、長時間労働から抜けだせなくなっているのです。
2. 残業手当をあてにする
残業代が支給される企業においては、働いた分の給与が残業手当として割増されます。社員の中には、この残業手当をあてにして、必要のない残業をして給料を上げるような者も出てくることがあります。
3. 規定労働時間である「8時間」を意識して働いていない
仕事は基本的に「8時間」という規定がないがしろになっており、8時間以内に仕事を終わらせる習慣が身に付いていない可能性があります。
4. 長時間働くと評価が上がる
時間通りに仕事を終わらせる社員よりも、効率が悪くても長時間仕事を行う社員を高評価するようなことがある場合は注意が必要です。
5. 8時間労働では処理できない仕事量
仕事量が多すぎると、規定時間で処理できません。その結果、残業が発生し、長時間労働がなくならない可能性があります。
長時間労働を止めることで、以下の6つのメリットが期待できます。
1. 残業代の削減
残業が減ることで、残業代を大きく削減できるでしょう。また、会社全体の労働時間が減れば、さらに人件費を抑えることができます。
2. 生産効率の向上
労働時間を明確にすることで、仕事の効率化が求められ、会社全体で生産効率向上が期待できるでしょう。また、労働時間が長くなるにつれ、知的好奇心は低くなる傾向があります。長時間労働を改善し、若者が学ぶ意欲を増すことで、イノベーションも高められる可能性があります。
3. 経費を給与や賞与に還元できる
上記2つが満たされれば、経費を成績の良い社員の給与や賞与に還元したり、新規事業や既存事業の拡大のために投資できます。
4. 雇用の促進
長時間労働をなくすことで、今まで労働条件が合わず採用が出来なかった人材を雇うことができます。育児や介護などの事情で、働ける時間が制限される能力の高い人材を、時短正社員などの形態で採用することもできるでしょう。また、長時間労働の抑制によって、社員の労働効率への意識を高めることができます。
5. 社員のプライベートを確保できる
会社が長時間労働に歯止めをかけることで、社員はより多くの時間を自分のために使用できます。同時に、社会問題になっている少子化問題の解消などにもつながるのではと考えられているのです。厚生労働省の調査によると、夫が育児に十分な時間を充てている家庭では、第二子の出生率が高まるとされています。夫が休日に、6時間以上育児に時間を充てている家庭の場合、その80%が第二子を設けています。
参考:第9回21世紀成年者縦断調査
6. 過労死のリスクを抑制できる
長時間労働は仕事の効率を下げるだけでなく、過労死のリスクを上昇させます。社員の健康のために、長時間労働の抑制が必要なのです。
では、残業を減らすためにできる、改革の具体例をいくつかご紹介しましょう。
1. 会議時間の短縮
実のない会議をすると、残業が増える可能性が高くなります。以下の方法で会議時間の短縮を図りましょう。
情報の管理をITやクラウドを利用して、いつでも確認できるように共有するだけで、大幅に会議の時間を短縮できるでしょう。それに伴ってペーパーレス化ができ、資料をコピーする時間の短縮が期待できます。
また、人数や話す時間などを制限することで、物理的に時間を短くできるでしょう。さらに、オープンなオフィスに改善することで、気軽にコミュニケーションができ、会議をしなくてもミーティングや情報交換が効率よく行えます。
2. 残業対策
残業を簡単にできないようにすることも大切です。
◇残業には報告を必須にする
◇残業を抑制する風習を根付かせる
残業が簡単にでき、長時間労働で評価が上がる風習自体を変えれば、残業は大幅に減らすことができるでしょう。また、適用できる対象業務は限られていますが、専門業務型裁量労働制を導入して、「労働時間の長さではなく成果で評価する」仕組みを作ることも良いでしょう。
3. 作業の効率化を行う
作業の効率化を図るには、以下のような工夫を行うと良いでしょう。
仕事の見直しをしたり、作業にメリハリをつけたりして、それをルールとして確立させることで効率化を図りましょう。
会社や社員が意識して長時間労働を削減しなければ、働き方改革は難しいでしょう。今回ご紹介したような対策を行って、残業の削減を行いましょう。