新型コロナウイルスによって、自社のあり方を改めて考える企業が増加し、それによってオフィスのあり方もいままでになく多様化しています。今回は、アフターコロナで変化する、様々なオフィスの変化をご紹介します。コロナという今までなかった危機をきっかけに、新たな動きをみせる企業に注目してみました。
新型コロナウイルスの影響により、リモートワークが推奨され、オフィスの役割や必要性は大きく変化しました。
リモートワークによって会社の一体感が失われたと考え、ソーシャルディスタンスを確保しつつ、全員が出社できるように取り組んだ事例もあれば、全社でリモートワークを行った企業では、ごく一部の部署を除いてほとんどオフィスが利用されないという事態も発生しています。
一部だけリモートワークを行った企業でも、部署ごとで出社率を設定し、部署内でローテーションリモートワークを実施して、オフィスのデスクも間を開けた形で利用するなど、全体としてみれば、オフィスの稼働率は非常に低い状態となる例が多くみられるようになっています。
そういった中で当然として出てきた動きとして、オフィスを縮小したり、解約する企業が増えてきました。
ある企業では半分の広さのオフィスを縮小、またある企業では管理部門のみをオフィス勤務とし、それ以外の部署はすべてリモートワークにして、オフィスは解約するか、あるいはまったく別のオフィスを借りるといった状況が出てきました。
また、東京から地方へと、オフィスを移転するケースなども増えてきています。
【多様性のある新たな働き方に向け 本社をWeWork渋谷スクランブルスクエアに移転 横浜にも新拠点を構え、渋谷・横浜を中心とした拠点構成に】
https://dena.com/jp/press/4731
IT大手のDeNAは、渋谷ヒカリエの本社のほか初台・新潟にオフィスを構えていましたが、本社をWeWork渋谷スクランブルスクエアに移転します。リモートワークが加速し、出社率が6%まで下がってもパフォーマンスが維持できていることが原因ですが、シェアオフィスを活用することで、変化の激しいIT業界で変化に対応しやすいオフィスを実現することを目的としているのが特徴です。
【オフィス縮小移転で年間6000万円削減、浮いた費用どう使う? “やせ我慢”しないと決意した会社の例】
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2102/22/news007.html
こちらの記事では、ClipLine(東京都港区)という動画サービスを提供している会社が、オフィスを縮小移転した事例が紹介されています。リモート勤務中心の業務でも、対面でのミーティングやブレインストーミングが必要だという考えや、社員の居住地を考慮し、引き続き都心部で、シェアオフィスではなく旧オフィスの4割程度の広さのプライベートオフィスに移転しています。これによって浮いた予算をテレワークの補助や人材への投資にあてることで、人材不足の解消につなげています。
【ジャパネットが進める「withコロナ」時代の働き方。「東京である必要があるのか」から導いた主要部門の地方移転】
https://netshop.impress.co.jp/node/8225
こちらは、テレビ通販大手のジャパネットグループの事例です。ジャパネットは人事・経理など12部門を東京から福岡に移転させることを決定しました。東京の社員を福岡に異動させるとともに、福岡での中途採用を強化する予定です。
これにより、原則出社を基準に、コロナと共存するオフィスのありかたを模索しています。テレビ局との対応を行うような、東京にあったほうがよい部署は東京、それ以外は地方というように、より戦略的にオフィスをデザインすることを目指しています。
このような動きは、新型コロナのパンデミック期間だけの話ではなく、アフターコロナを見据えたとしてもオフィスのあり方を変えてきています。
リモートワークでも生産性が確保できる職種・業種がわかるようになったいま、通勤代やオフィス代を企業として負担し、社員に通勤してもらうべきなのか問われています。
都心ではなく通勤圏からはずれた郊外に住み、リモートで仕事をするようなライフスタイルも生まれてきています。郊外では、家賃を含め生活費が安くあがるため、労働者の視点からも経営者の視点からも魅力があります。リモートで生産性が落ちない一部の業務によっては、オフィスも働き方もそのあり方が大きく見直されて来ているのです。
これらをふまえて、企業は事業のあり方や働き方を再デザインし、それにあわせてオフィスも再デザインしていく必要があるといえるでしょう。
変化への対応を重視する企業、チームでの創造力を重視する企業、都心にこだわらず地方人材を活かすことを重視する企業など、コロナをきっかけに自社の強みを絞りこむ企業が増えています。これらの作業は非常に手間がかかりますが、企業の無駄を省き、利益体質に改善するチャンスでもあります。ぜひ尻込みせずにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。