フリーアドレスを導入するには、そのメリットだけでなくデメリットも理解することが重要です。想定される懸念点をあらかじめ把握しておき、対策を立てることで、フリーアドレス導入における失敗を防ぐことができるからです。
今回は、フリーアドレスをスムーズに取り入れるにはどうすれば良いかを、弊社のオフィスを例にご紹介します。
「フリーアドレスはいろんな人とコミュニケーションが取れるところが気に入ってます」
そう話すのは、弊社の奥永亮治。
「当社では昨日と同じ場所には座らないというルールがあり、毎日座る場所によって仕事以外でもコミュニケーションを取れるようになりました。今日話をしておきたい、同じ仕事を共有したいという人がいる時には、横の席が空いていればそのまま横の席に座り、時間を合わせたり呼んで話すということがなくなり、効率的になったと感じています。」
固定席では、仲の良い人や席が近い人など、コミュニケーションの幅が限定されがち。しかし、フリーアドレスは毎日違う席に座ることになるため、普段はあまり話さない他部署の人の隣で仕事をする機会も多くなり、幅広いコミュニケーションの機会が生まれます。
仕事以外の話題を共有する機会も自然と多くなるので、社員同士の結びつきもより強固になります。
また、ミーティングをするための場所や時間を指定するといった段取りを省くことができるのも、フリーアドレスのメリット。ちょっとしたアイデアの共有や業務報告、相談をしたい時、フリーアドレスならより気軽に、効率的にコミュニケーションが可能です。
普段から声をかけあって密にコミュニケーションを図っているため、簡単な内容ならわざわざミーティングを開く必要がありません。その場ですぐに相談や報告、共有が行われるので仕事がスムーズに進みます。
出入りが激しい職場の場合、人数分のデスクを用意する必要がありません。無駄なデスクを配置しないことで、余計なスペースを省くことができます。また、仮に社員の人数が増えても、広いオフィスに移転することなく、必要最小限の座席の増設で対応できる点も見逃せません。
逆に、フリーアドレスのデメリットもお伝えしておきます。
「フリーアドレスは集中しにくいところが少し不便」
「その日の気分で立ったり座ったりの作業環境を自由に席を選べることはいいことだが、仕事に集中したい時、このコミュニケーションを優先したこのフリーアドレスの空間だと、周りの人の声(特にコミュニケーションが盛り上がった時)が時にうるさく感じ集中しにくい空間になることです。」
(飯田和彦係長)
この意見を端的にまとめると、
といったデメリットがあるということです。
フリーアドレスは視線や音のプライバシーが犠牲になる側面が少なからずあるため、集中が必要な作業には向かない空間になってしまうリスクも抱えています。
また、運用ルールを明確にしておかないと、「結局、毎日同じ席に座っている」「仲のいい社員同士で固まっている」といった状態にもなりかねません。
では、上記で挙げたデメリットを解消するには、どうすればいいのでしょうか?
以下、対策ポイントをまとめてみました。
フリーアドレスの主な目的は「コミュニケーションの促進」と「省スペース化」です。これらの目的を社員に十分に共有しておくことが重要です。そうでないと、「面倒くさい」「意味あるの?」という気持ちが生まれてしまいます。
継続的にフリーアドレス導入の目的や意義に関する情報共有を行い、フリーアドレス導入に対する社員の意識を向上させていきましょう。
固定席化させないためには、席を流動化させる工夫が必要です。弊社では、「昨日と同じ場所には座らない」というルールを作り、それを守っています。また、毎日クジ引きで席を決めているところもあるようです。
フリーアドレスとは別に、一人で集中して作業できる空間を確保しておくことも重要です。
こちらは、通称「集中エリア」。この密室空間では、周囲の視線を気にすることなく、思う存分クリエイティブな作業に没頭できます。
これなら、パーテーションでオフィスを間仕切りする必要がないので、無駄にスペースを圧迫することもありません。
フリーアドレスを取り入れている弊社では、以下のようなデスクやテーブルを採用しています。
継ぎ目や固定ワゴンがないタイプのテーブルです。境目がないため、自由にテーブルの使用人数を変えることができます。
足元がスッキリしているので、モバイルワゴンなどを収納することも可能です。
また、各テーブルにモニターを取り付けることで、持ち運びができるタブレットPCの映像出力が可能です。
フリーアドレス導入に関するデメリットやリスクは、今回ご紹介したような工夫を行うことで十分に対策することができます。大事なことは、職場環境に柔軟性を持たせることです。
コミュニケーション促進のためにフリーアドレスを取り入れつつ、一人で業務に没頭できるワークスペースも同時に確保しておくこと。そのような、働く社員それぞれのニーズに合わせたオフィス設計が重要なのです。