近年、働き方改革の流れもあって、オフィスのフリーアドレスが再び注目を集めています。しかし、ただ単に有名企業が取り入れているからという理由だけで導入してしまうと、社員のストレスを逆に増やしてしまい、生産性の悪化や人材の流失の原因になってしまう可能性もあります。事前に準備しておくべきポイントをまとめました。
企業の生産性向上やイノベーションを生み出す施策の一つとして、オフィスのフリーアドレスが採用される事が増えてきましたが、社員によっては返ってストレスとなる事もあるという事があります。そのため、フリーアドレスを進める前に、オフィスのレイアウト設計や、新設備を導入するなどの対応をすることで、ストレスフリーで働ける環境を用意する必要があります。
とくに失敗例の多い要因を3つ、対策とあわせてご紹介します。
最初のストレス要因は、集中力の問題です。
以前は固定された席で作業に集中できていた社員が、非常にオープンな席・場所になったことで、周りの会話が気になってしまい作業に集中できないといった問題があります。
意外と効果があるのは、オフィス内での音楽です。イヤホンで音楽を聞くことを許可できればなお良いですが、見た目の問題もあるためオフィス全体に流すだけでも効果的です。
人の会話は気が散りますが、音楽は大丈夫どころか逆に集中を高める効果が見込めるそうです。
それ以外だと、オフィスレイアウトを設計する際に、作業に集中したい社員用に集中ゾーンを作成するのがおすすめです。個室が設置できればベストですが、単に「集中して作業するスペースはここ!」と決めるだけでも効果が見込めます。図書館のように、周囲の人々が集中していると、自分自身も自然と集中できるようになります。
最近では、テレキューブといった簡易的な個室ブースもありますので、状況に応じて導入するのも良いでしょう。
2つ目のストレス要因はOJTの問題です。
入社して間もない新人は、常に先輩の横にいて先輩にそのつど教えてもらう、OJTというスタイルで仕事を覚えることが多いと思います。
これまでのように、座席が固定の場合は問題ありませんでしたが、フリーアドレスになると、先輩が近くにはおらず座席も分からないため、すぐに相談できないといったことがストレスになる事があります。場合によっては、せっかく多額の経費をかけて採用した新人が、簡単に退職する原因にもなりかねません。
新人とその指導担当の先輩は、特例として一定期間は席を固定にするなど運用でのカバーが必要です。最近の座席表システムでは、このような場合の対応もできるものが多いので、利用するのもおすすめです。
3つ目のストレス要因は、フリーアドレスになる事で、誰がどこにいるのかすぐにわからなくなるという問題です。
新人に限らず、業務を進める上で上司などに相談したい時は多くあります。
しかし、いざ相談しに行こうと思ったときに、その対象の社員がどこにいるかぱっとわからず、ちょっとした相談が出来ないといったストレスは、知らず知らずのうちに報連相の減少を招きます。コミュニケーションを推進するために導入したフリーアドレスが、逆にコミュニケーションを阻害することとなってしまっては本末転倒です。
実際、フリーアドレスを導入することで、部署間のコミュニケーションが増加したのに、部署内のコミュニケーションが低下してしまったという失敗事例は多いようです。
また社員の居場所がわからないと、電話の取り次ぎでもトラブルが多く発生し、ストレスの原因となってしまいます。電話は若手が出るように指導している企業は多いと思いますが、最近の若手はSNSの発達で電話に慣れていません。そこに、このようなトラブルを何度も経験すると、電話対応が原因で若手が退職してしまうなんてことも起こりかねません。
解決策としては、ここでも座席表システムの導入がおすすめです。
座席表システムを利用すれば、社員がその日にどこに座っているのか、すぐに把握できます。またスケジューラーとリンクすることで、外出の場合などは帰宅予定時間も把握できるので、電話対応も容易になります。また離席した上司が席に戻ったときにプッシュ通知が来るようにすることで、すぐに相談に行けるようにもなります。
相談のために個人ミーティング用の個室を設定したり、スタンディングの雑談ゾーンを設置するなどの、話しやすい場を事前に設置するといった対策も重要でしょう。
フリーアドレスは部署間のコミュニケーションの促進が目的のため、逆に部署内の密なコミュニケーションが弱まってしまったり、集中して作業する業務には不向きな部分もあります。システムの導入などの手段を使い、上手にバランスをとって運用することが、フリーアドレス導入の鍵と言えるでしょう。