フリーアドレスとは、固定された自分の座席を持たず自由に座席を選べるようにすることです。
元々はオフィスの効率利用を進め、賃料などの経費を削減することが主な目的でしたが、近年は社員間のコミュニケーションを促進することでイノベーションにつなげるなど、働き方改革の一環としての導入が進んでいます。
フリーアドレスは、上記のようにメリットや効果がありますが、残念ながら導入が進む中で、失敗事例や廃止の事例も出てきています。
導入にあたっては運用ルールを含めてしっかりと準備し、導入後も改善を随時行わないと期待した効果は得られません。失敗事例には大きく5つの原因があるようです。まずは順に解説していきましょう。
まず失敗・廃止の原因は、フリーアドレスにしたことによって、社員の居場所が把握できなくなるという問題です。来客や電話があった場合など、席が固定されていれば座席表を見て本人を探すこともできますし、不在の場合はメモを置いておけば問題ありません。
しかし、フリーアドレスでは携帯電話の支給など、確実に連絡が取れる手段を確保しておく必要があります。
また、難しい案件を抱えて上司に相談したいときなどは、上司がどこにいるかわからないという状態は非常に困ったことになります。報連相がスムーズに行える仕組みを事前に構築しておくことが重要です。
新人の教育をする場合、以前は先輩を席の近くに配置して、常に新人を見守るようにすることで教育サポートができていました。
しかし、フリーアドレスにすることで、新人が先輩に相談したくても相談相手が見つからないほか、先輩も新人に適切なタイミングで指導ができないという問題が発生しているようです。
1on1ミーティングの導入など、積極的に新人とのコミュニケーションをとる体制も構築する必要があるでしょう。
3つ目の原因は、せっかくフリーアドレスを導入しても、毎日違う席に座ることを積極的に奨励しないと、結局席が固定的になってしまって導入した意味が無くなるというものです。
社員が自由に席を選べるということは、逆に言うと毎日違う席を選ばなくてはならないというストレスを社員に与えるということでもあります。
無線LANや電源、ロッカーなど、オフィスの環境が整っておらず不便な状態を強いてしまった場合は尚更で、結果としていつの間にか元どおり、なんてことも多いのです。 導入前には、オフィス環境をしっかりと整えることが大切です。
フリーアドレス導入の目的は、部署を横断した社員間コミュニケーションの活性化です。これは言い換えれば、意図的に社内の雑談を増やすということでもあります。
まさにこの雑談こそがイノベーションを生む源泉となるわけですが、メンバーのレベルや組織の成熟度によっては、単に雑談をしてサボっているだけで何も産み出さないということも起きがちです。
また、周囲の会話がノイズとなって、集中力を削がれてしまうという問題もあります。別に集中して仕事をするためのブースを用意するなど、個人の作業効率にも配慮したオフィス設計が重要になってくるでしょう。
最後の失敗原因は、旗振り役の不在です。企業のトップが思いつきで導入を決めるも、後の作業は担当者に任せてしまって、やらせっぱなしというのはよく聞く話です。
結果として、担当者はなぜフリーアドレスを導入しなくてはならないのか理解が不十分なまま導入を進めるので、現場の不満を説得できなくなってしまいます。
そもそもフリーアドレスの導入は、単なるオフィスのレイアウト変更ではなく、自社の仕事を知識・作業型労働から思考型労働に転換させる作業でもあります。導入にあたっては、企業のトップが責任感を持って、担当者をサポートすることが重要になってきます。
また同様に、人事異動で担当者が変更になった場合も、フリーアドレス導入の目的が見失われがちですので注意が必要です。
フリーアドレス廃止の失敗事例をまとめました。ぜひ参考にして、フリーアドレスをうまく活用できるようにしていきましょう。
【部署が大混乱し10日で中止に フリーアドレスで失敗した企業の一例 – ライブドアニュース】
こちらの事例は、いきなり大規模にフリーアドレスを導入し、コミュニケーションを促進するはずが逆に相談の難易度があがり、うまく行かなかった事例です。
【フリーアドレス導入で仕事効率低下…グーグルの猿真似で「働きにくい」おしゃれオフィス急増 – Business Journal】
こちらは、単にフリーアドレスがオシャレだという理由だけで導入したために、逆に働きやすさが損なわれた事例です。
【職場の「フリーアドレス化」定着に必要な視点- 東洋経済 ONLINE】
こちらでは、フリーアドレスが日本に入ってきた当初、オフィス環境の整備が不十分なために現場の不満を抑えられず廃止になった企業が多かったことがわかります。
【オフィスのフリーアドレスとは | メリット/デメリット・導入失敗・成功企業の働き方改革事例 – ボクシルマガジン】
こちらでは、導入に失敗する企業として、書類の取り扱いが多い企業、在席率が高い企業の事例が挙げられています。
【フリーアドレスオフィスは効果に賛否両論? – ZUU online】
こちらの記事では、経営陣のコスト面の意識が強すぎて、社内の働き方全体のグランドデザインが描けていないことが失敗の原因に多いことが紹介されています。
このようにフリーアドレスの導入にあたっては失敗事例や廃止の事例もありますので、ぜひ参考にしていきましょう。