フリーアドレスとは、社員の固定の席を作らず自由に席を選べるようにするオフィスのスタイルのことです。
社員間のコミュニケーションを活発にしたり、その日の仕事内容に応じて場所を変えることで仕事の生産性を上げる効果があります。
近年、働き方改革を単なる残業時間の削減でなく、生産性が向上するための取り組みにしなくてはならないという声が大きくなってきていますが、まさに社員の生産性を高める仕組みとしてフリーアドレスは注目を集めています。
フリーアドレスのメリットは大きく3つあります。
◯イノベーションが生まれる可能性が増える
最大のメリットは、日々席が変わり業務上の会話や雑談を行う相手が変わることで、予想もしないイノベーションが得られることです。
転職に関する研究では、転職先の情報を誰から得たかという質問を転職者にしたところ、身内や友人などは意外と少なく、異業種交流会などで一度会っただけといった浅いつながりの人脈からが最も多かったという結果があります。
仕事でも同様で、自分の部署の濃い関係だけでなく、他部署の浅い関係の社員と交流することで思わぬ成果を生み出すことができる場合があります。
◯リフレッシュ効果
個人単位で席が変わることで、マンネリ化を防ぎ毎日新鮮な気持ちで仕事ができるという効果もあります。
◯経費削減
フリーアドレスは経費削減の面でもメリットがあります。
特に常に外に出ている営業職やフルタイムではない従業員の多い部署では、個人の席を用意する必要はないことがあります。フリーアドレスを導入することでオフィスのスペース効率を向上させることが可能です。
フリーアドレスにはデメリットもあります。
個人によっては、自分の席を決めていたいという要望があり、フリーアドレスの導入に反発する場合があります。
旅行で毎日違うホテルに泊まるのが新鮮で楽しい人もいれば、同じホテルに連泊したい人もいます。そのような人に対するケアをどうするかは大事なポイントです。また自分の席がないことで、自社への帰属意識が下がる場合もあります。
他にも、システム開発やクリエイターなどの、業務に必要な備品を動かすのが困難な部署ではフリーアドレスの導入は逆効果となってしまいます。
自分たちの職場がフリーアドレス導入に向いている職場なのかどうかの見極めが重要です。
フリーアドレスを導入した場合のよくある失敗例は、ルールとしては席を自由に選べるけれど、実体としては結局毎日同じ場所に座り続けているというケースです。
これでは、せっかくフリーアドレスだったはずのオフィスが、一瞬にして元の硬直化したオフィスに逆戻りとなってしまいます。
そこで大切なのが、ルールの設定です。
毎日同じ席には座らないというルールの徹底のほか、席を自動的に決めるシステムを導入したり、くじ引きで席を決めるなどが有効です。
各自で自由に選ぶだけだと固定化までは行かなくても、ついつい自然と似たような席、仲の良い社員の近くなどになりがちです。
なるべくランダムに、自分では絶対に選ばない席に決まる仕組みを作ることで、オフィスの活性化を図ることができます。
フリーアドレスで一番問題となるのが、個人の荷物やバッグをどこに置くのかという問題です。
これに関しては、個人用のロッカーを併用するのが一般的です。
鍵付きで、書類やノートPCなどを安全にしまっておける大きさのロッカーを用意するのが良いでしょう。
このロッカーも定期的に場所を変更すると、社員が自主的に荷物を整理するようになるので効果的です。
ロッカーは出社してすぐに荷物が取り出せる、入口近くに設置すると使い勝手がよくなります。
また、カバンを机にかけておくことのできるフックなどは、初めから用意しておくと便利です。
他にも個人用ロッカーと机との間で、私物をうまく移動できる収納バッグやワゴンなどの便利グッズも今では多く販売されていますので、これらを導入するのもオススメです。
しかし、何といってもフリーアドレス成功の条件はオフィス全体のレイアウト設計です。
社員間の雑談が自然と生まれるリフレッシュスペースやミーティングスペース、集中して作業がしたいときに対応したスペースなど、その日の業務に応じて社員が使い分けられる多様な空間を適切に配置することが大切です。
それによって、いつでもどこでも働けるようなオフィス環境を用意することが社員の生産性を高めることにつながっていくのです。
フリーアドレス導入のためのレイアウト設計は既に多くの事例があります。
専門家に相談することで、失敗しないオフィスレイアウトを最初から構築していきましょう。