近年、少子高齢化による人手不足もあって、働き方改革が大きく叫ばれています。
しかし、単なる残業の削減だけにとどまり、上手くいかない事例も多いようです。
そんな中、今注目されているのが、フリーアドレスの導入による生産性の向上です。
フリーアドレスとは、個人の席を固定するのではなく、社員が自由に席を選び仕事をするスタイルのこと。
フリーアドレスを導入する事で、社員のコミュニケーションが向上し、より生産性の高い仕事ができるようになったという事例が増えています。
とはいえ、ただ席を自由にすれば良いというものではありません。
自由に席を選べるというのは、逆に言うと毎日違う席を選ばなくてはならないというストレスを社員に与えることになります。
結果として、いつの間にか元どおり、なんてことも多いのです。
また、毎日席が変わることで、チームの所属意識が下がってしまう場合もあります。
フリーアドレスの導入に失敗した例を見ていくと、大きく3つの特徴があります。
◯目的と手法を取り違えている
フリーアドレスはあくまでも手法です。何のためにフリーアドレスを導入するのかをよく考えず、ただ最先端の企業が導入しているから、という理由だけで導入してしまうと失敗してしまいます。
社員間の会話をもっと増やして連携良く仕事ができるようにしたいなど、なぜフリーアドレスを導入するのか、期待する効果をしっかりとイメージし、目的を明確化した上で導入することが大切です。
◯道具をしっかりと揃える前に導入して失敗
そもそも社員のPCがデスクトップだったり、携帯電話を各自が持っておらず、固定電話のままであるため、電話がかかってきた際に取り次げなかったり、無線LANの環境が整っていなかったりといった、事前の準備ができていない状況で導入すると失敗してしまいます。
導入前に必ず、オフィスの環境整備を整える必要があります。
◯管理職が固定席
フリーアドレスは前に記したように、導入初期は社員にストレスを与える場合があります。
ですので、放っておくといつも同じ席を利用してしまうことにつながります。
そのため管理職だけが固定席になっていると、フリーアドレスを導入したにも関わらず席が固定化してしまった場合、管理職が注意することができなくなってしまう可能性があります。
フリーアドレスを導入するにあたっては、管理職もフリーアドレスを利用することがおすすめです。そして旗振り役の存在としてフリーアドレス促進を図っていくことが重要です。
フリーアドレス導入初期の社員のストレスは、毎日の席選びのほかにもあります。
例えば、電話がかかってきたときや、来客があった場合です。
取り継ごうにも、社員の居場所がわからないということで、どこにいるのか探す時間の無駄が発生します。結果として、事務の社員の生産性が逆に下がるということが起こり得ます。
また、集中して作業をしたいときに集中して作業をするスペースが確保できず、生産性が落ちるといったこともあります。
他にも、毎日席が変わるということは、書類や文房具などを置いておけないということですから、どんどんカバンが大きくなっていくなんてこともあり得ます。
このようなことから、結局いつの間にか席が固定化していってしまうというのが、失敗の黄金パターンといえるでしょう。
では、どうしたらフリーアドレスを社員に自然に浸透させることができるのでしょうか。
まず一番大切なのは、事前に社員に対してフリーアドレスを何故導入するのか、フリーアドレスの旗振り役となる存在がその目的をしっかりと説明することです。
この時、メリットだけでなくデメリットもしっかりと説明し、導入初期に起こりうるトラブルなども事前に伝えておくことが重要です。
これをやっておかないと、社員が心の準備をすることができず、ストレスを溜めこんでしまい、結果としてフリーアドレス導入の抵抗勢力となってしまいます。
また、くじ引きで席を決める、昨日と同じ席に座らないなど、社員に負担がかからないルール設定なども有効です。ただ移動や転勤が頻繁な部署ではなかなか社員にルールが浸透しづらい場合もあるので注意が必要です。
そして、その上で本当に大事なのは、導入する目的に合わせたオフィス環境の整備です。
電源、ノートPC、携帯電話、無線LANなどの最低限の環境はもちろん、社内のペーパーレス化、各自の荷物の置き場所の設定が重要です。
また集中作業用のスペース、リラックスして雑談が出来る場所など、社員の仕事内容に応じたバラエティに富んだフリーアドレススペースを設けることがポイントです。
社員が自然に無理なくフリーアドレスに移行できるオフィスレイアウトを事前に用意することが成功の秘訣と言えるでしょう。
ある導入企業様ではフリーアドレスのデスクにアルコール除菌シートを置いておくことでフリーアドレスが促進したという独自の事例もありました。フリーアドレスを運用していく中でも様々な工夫をしながら進めるとよいでしょう。
さらに、フリーアドレスを導入するにあたって最も大事なことは、会社の組織構造も変革する覚悟でやらないといけないということです。
フリーアドレスは、いわゆるピラミッド型の上意下達が当たり前の組織では全く機能しません。逆に言うと、そのような組織で良い場合は、そもそもフリーアドレスを導入する必要はないのです。
近年、野球型組織からサッカー型組織へという動きが話題となりましたが、社員が自分で考えて動く組織にしたいと考えるのであれば、フリーアドレスは非常に有効な取り組みだと言えるでしょう。